2019/07/22 09:44

7月5日発売「現代農業8月号」のスゲ笠特集で発酵農園が紹介されました。365日スゲ笠で作業している発酵農園にはうってつけの特集。スゲ笠をかぶって田植えをしているところを取材に来ていただきました。


この日は10人での田植え。皆で発酵農園コレクションのスゲ笠をかぶり、青空の広がる棚田で田植えをしている様子は明治初期くらいにタイムスリップしたようでした。


スゲ笠が帽子と違うところは、頭と笠の間に隙間があること。風が抜けて涼しく、頭が蒸れるのを防いでくれます。また、骨組みを組んでスゲを巻き付ける頑丈なつくりは、雨も防いでくれます。東南アジア各地で見られるスゲ笠には、高温多湿でスコールや夕立の多いこの地域の先人たちの知恵が詰まっています。


特集の終わりには、「スゲ笠作り 伝え継ぎたい農家の手仕事」として、スゲ笠作りの後継者育成に取り組む山形県飯豊町の紹介があります。スゲ笠作りに携わる方の平均年齢は75歳以上。この技が伝え継がれていくことを祈ってやみません。


本屋さんまたは農文協のネットショップで、ぜひお買い求めください☆

(農文協で出版している本、どれも面白そうです)



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8月号には、他に「進む、脱ネオニコ系殺虫剤 ミツバチとヒトへの影響」という特集もあり、ブラボー!現代農業!!と喝采を送りたくなります。農家目線から脱農薬を考える、読み応えのある特集です。農家でない方にも、ぜひ読んでいただきたいです。


ネオニコチノイド系の殺虫剤は2005年から起きている「ミツバチ大量死」の原因とされています。ネオニコ剤が登場したのは1992年。アブラムシからチョウまで幅広い対象に使え即効性があり残効性もある殺虫剤として瞬く間に広がり、今や販売額は殺虫剤市場のおよそ25%を占めるようになりました。イネのカメムシ防除にネオニコが普及し始めたのが2003年。カメムシ防除の時期になるとミツバチが大量死したり巣に戻らなくなったりする事件が起き始めたのが2005年。その巣やハチからは、ネオニコの成分が検出されています。


ミツバチは、果樹園や畑で受粉を行い、食料の1/3がミツバチなどの生物の受粉によってつくられているといわれます。蜂蜜以外にも、果樹や野菜という贈り物をしてくれているのです。


EUでは欧州食品安全機関の4年に渡る調査の結果、「暴露経路によって程度は違うものの、全体的にはミツバチにとってネオニコ3種はリスクがある」として今年4月に屋外使用全面禁止を決定。カナダ、アメリカ、ブラジルの一部地域ではネオニコの使用は既に禁止、台湾や韓国でもネオニコ3種の使用が制限されています。


ところが、世界の流れに反するように、日本政府は2015年以降、ネオニコ成分の食品中の残留基準を緩和しています。(進じられない!!)


脱ネオニコ特集の後半は、「発達障害の原因としてのネオニコチノイドなどの農薬」。自閉症などの発達障害の一因として、有機リン系などの農薬が脳の発達に及ぼす悪影響は以前から指摘されています。この記事の筆者が各国の農地単位面積当たりの農薬使用量と、自閉症の有病率を比べてみたところ、いずれも上位4カ国が韓国、日本、イギリス、アメリカと一致したそうです。ちなみに、韓国と日本は、農薬使用量/自閉症の有病率ともにぶっちぎりの首位です。


数ある農薬の中でも、近年注目されているのは、脳の発達への悪影響が特に懸念されているネオニコ。母体経由で低容量のネオニコに暴露したマウスの研究では、不安・攻撃・性行動に異常が見られ、脳内からはネオニコが検出されました。また、発達期のマウスにネオニコを投入すると、記憶に重要な脳海馬領域の神経細胞が減少するなど、ネオニコがほ乳類の脳の発達に悪影響を及ぼすという研究報告は多数あります。


2016年の論文によると、国内の3歳児223人の尿中に有機リン系、ピレスロイド系代謝物が100%、ネオニコも80%検出されました。2019年の論文では、子ども46人の尿からネオニコが100%検出されたという報告があります。薬は人間へ投与して安全性を検査しますが、農薬は人間では調べません。数年、数十年して影響が判明した例が過去にも多数あります。「予防原則」に基づいて、今の農薬の使い方について根本からの見直しが必要ではないか、と記事は結んでいます。


農薬の話だからといって農家だけに関係があるわけではありません。殺虫剤(「ブラックキャップ」「コバエがホイホイ」)、ペットのノミとり剤(「フロントライン」)にもネオニコが使われています。ネオニコではありませんが、発ガン性や脳の発達への悪影響を指摘されているグリホサートを主成分とする除草剤「ラウンドアップ」は近所のホームセンターで大々的に売り出されています。アメリカでは、「ラウンドアップ」の使用によりガンを発症したという訴訟が相次いで認められています。「ラウンドアップ」は、フランス、オランダではすでに使用禁止、ドイツ、イタリアなど33カ国が2〜3年後には使用禁止を表明しています。ところが、日本では2018年にグリホサートの残留基準値を大幅に緩和しているのです(またしても進じられない!)。放射能もしかり、政府が「安全」のお墨付きをしても、本当に安全なのかどうかは自分で判断する必要がありそうです。


何を選ぶのか。買い物を通して私たち一人一人が意思表示をすることができます。ネオニコやグリホサートの入っている家庭用品を買う人がいなければ、販売店では商品を取り扱わなくなるでしょう。ネオニコやグリホサートが残留している農産物を買う人がいなければ、農薬を減らす農家が増えるでしょう。


ネオニコ特集では、農家の生の声も紹介されています(伊藤さんの言葉がとっても素敵です!)。農薬を使いたくないけど使わざるを得ない、そんな状況もあると思います。ちなみに、去年の発酵農園はイネクロカメムシが大発生。手で除きましたがその大変だったこと。農薬を使いたい気持ちがとってもよくわかりました。そんな時に、直接お客さんとやりとりをしている私たちは、あの人やこの人に万一でも農薬を使ったお米は届けられないと思うのです。


農薬を使わない。農家のその決断を後押しするのは、日々のお買い物かもしれません。